世間を賑わせている海賊版サイト「漫画村(漫画タウン)」に対し、日本の政府はサイトへのアクセスを遮断するよう接続業者に要請しました。この件について、問題点を指摘します。

ブロッキングは簡単にすり抜けられる

 アクセス制限(検閲)は簡単にすり抜けられる方法がいくつかあります。

中国のネット規制も突破できる「VPN」

 民主的な国では考えられない話(皮肉)ですが、世界には政府がウェブサイトの閲覧を制限し「検閲」している国があります。

 例えば中国では、政府にとって都合の悪いサイトへのアクセスを遮断する「グレートファイアウォール」というものがあり、そのおかげで中国国内からFacebookやYoutubeにアクセスすることができません。

VPNを使えば検閲をすり抜けられる

 しかし、中国に滞在している日本人や、海外の情報にアクセスしたい中国人たちは「VPN」という接続を利用することで、中国政府による検閲を突破し、自分がアクセスしたい情報に自由に手を伸ばしています。

 VPNはPCやスマホに専用のアプリやソフトをインストールするだけで、誰でも簡単に使えます。料金は年間数千円掛かるものの、通信速度も通常のネット通信と遜色なく使えるものもあります。

 日本政府による検閲についても、「VPN」を利用することで簡単に突破することが出来ます。VPNを利用する際は、信頼できる企業が提供しているものを選んでください。

パブリックDNSですり抜けられる可能性も

 今回日本政府が通信事業者に対して要請した「検閲」は「DNSブロッキング」という手法で行われると見られています。

 DNSの説明については以下の記事で詳しく説明していますが、こうした「検閲」に対してはパブリックDNSという無料のサービス(ソフトやアプリのインストールも不要)を利用することで突破できます。

通信速度には影響はありませんが、VPNと比べると設定が少々難しい面があるのがデメリットです。VPNと同じく、信頼できる業者が提供しているものを使ってください。

新たなリスクを生み出す恐れも

 「漫画村」へのアクセス制限は、意味が無いどころか新たな問題を生み出す恐れがあります。

 上で紹介したような「回避方法」は、今後実際にアクセス制限が掛かった際に漫画村ユーザー(小学生~大学生が多いと言われている)の間で拡散していくでしょう。その結果、VPNやパブリックDNSの普及につながると思います。

 VPNやパブリックDNSが普及すること自体は良いことです。VPNはWiFi通信のセキュリティを大幅に高める効果もあるため、適切なものを選ぶことでセキュリティが向上します。

 しかし、適切でないものを選んでしまった場合は、逆にそれ自体が新たなセキュリティリスクとなる恐れがあります。

ウイルス感染が広まるかも

 例えば、ユーザーのアクセス情報が流出してしまったり、あるいはウイルス感染してしまうといった「被害」が出る恐れもあります。

 実際、「無料VPN」の38%にウイルス感染リスクが発見されたという調査結果もあり、適切なものを選ぶことがとても重要です。しかし、漫画をタダ読みするような人たちが適切なセキュリティ意識や知識を持っているとは思えないので、今後深刻な問題を引き起こす可能性があります。

そもそもブロッキングは「適法」なのか

 既に多くの指摘がなされていますが、そもそも今回のような政府による「アクセス制限」の依頼は適法なのか、という問題があります。

検閲は違法

 漫画家や出版社の利益を守ることは言うまでもなく必要なことです。
 私自身、自分のサイト上に掲載した文章や図表を某中堅出版社に丸々コピーされ、勝手に出版物として世に出された経験がありますが、ショックのあまり数日寝込みました。権利侵害を受けている著者の方には心から同情します(詳細記事:晋遊舎様による無断転載について

 しかし、こうした違法なサイトを「ブロッキング」という適法かどうか怪しく、また効果も低い手法で対策することには反対です。

 「ネチケット」教育を疎かにしてきたツケがまわってきたと捉え、今後は学校教育の現場で著作権や正しいネットの使い方を教えていく必要があるのではないでしょうか。